MachiMachi☆の韓国映画レビュー第2回(JSA/공동경비구역JSA、2000年)

こんにちは、MachiMachi☆です。性懲りもなく2回目の韓国映画レビューです。

1回目に『シュリ』を選んだ時から「2回目はこれ!」と決めていたんですが、その後も朝鮮半島のアレコレを見聞きしてきたので、リライトには結構悩みました。

悩んだ結果、本作はあくまで「エンタメ映画」としてレビューします。悪しからずm(__)m
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JSA(JSA/공동경비구역JSA)
制作年:2000
監督 :パク・チャヌク
出演 :イ・ビョンホン、イ・ヨンエ、ソン・ガンホ、シン・ハギュン、キム・テウ
評価 :★★★★★(A級の「エンタメ」映画)

*画像はKMDb(韓国映像資料院作成の韓国映画DB)へのリンクです。注記がない限り、次回以降も同様です。

KMDb - 한국영화데이터베이스

「南北分断という現状」をテーマにした商業映画として、前年公開の「シュリ」に勝るとも劣らない出来である。ただ、「シィリ」が「よくできたハリウッドの娯楽大作」だとするなら、本作「JSA」はイギリスのスパイ小説風の、どこかシニカルな香りが漂っている。

なお、タイトルのJSA(Joint Security Area、共同警備区域)は、いわゆる「板門店」を指す。よくニュースに流れるのは南北会談用の建物の両側に両方の兵士が向かい合って立つ光景なのだが、実際にはもっと広い区域が「共同警備区域」である。
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舞台は板門店・共同警備区域の片隅にある小さな橋。朝鮮戦争当時にはその橋で捕虜交換が行われたというが、現在は使われることもなく、橋の両端に小さな詰め所があるばかり。だが、ある夜、重大事件が発生する。北側(=北朝鮮)の詰め所で、詰め所付きの兵士と監督役の将校各1名が射殺され、当直の軍曹(ソン・ガンホ)が重傷を負ったのだ。

実行犯と目されたのは南側(=韓国)側の詰め所付き兵士(イ・ビョンホン)。銃弾を受けながらも南側まで戻ってきたところを救出され、現在は入院中。だが、当人は「越境してきた北側の兵士に拉致されてしまい、脱出するためにやむなく射殺した」と供述。一方で、北側の生存者である軍曹は「いきなり相手が詰め所に押し入ってきて発砲した」と主張していて、南北の主張が真っ向から対立する。そこで、国連停戦監視団として駐留中の永世中立国スイスに事件の解明がゆだねられる。

担当捜査官として急遽スイス本国から派遣されてきたのが、亡命韓国人を父に持つソフィー少佐(イ・ヨンエ)。そこで南北双方とも優位に立とうとして様々な干渉を試みてくる。だが、死体の銃創と装弾数が一致していない点に気づいた彼女は、南側詰め所付きの、もう一人の兵士(キム・テウ)を尋問するのだが...

前半はミステリー仕立てだが、推理ものとは異なり、事件の真相は中盤あたりですでに見えてくる。しかし、語りかたが実にうまく、また、伏線に無駄がない。そのため、シーン毎に「あぁ、こうなってたのか」「次はどうなるんだろう?」などと、スクリーンから目をそらさせない。

また、シーンの切り替えが実にスタイリッシュ。供述書をめくるとそのまま回想シーンになったり、異なる階で同時に進行している尋問風景を映し出したり。特に素晴らしいのはラストシーン。「あれをこう繋げたのかぁ!」と感心してしまった。

シリアス一辺倒ではなくユーモラスなシーンもかなり多いのだが、これがまた、しっかり笑わせてくれるのにも関わらず、映画の雰囲気を壊すことなく見事に調和している。一言でいうなら「軍隊生活こぼれ話」風のエピソード。軍隊経験者が酒宴で語る、自分の経験を面白おかしく膨らませたヨタ話、といった感じであり、笑いながらも「ありそうな話だよなぁ」と思わされてしまう。

# たぶん、「ありそうな話」というよりは「あってほしい話」だったんだろうけど…

でありながらも、全体を通して見ると、時代や政治状況に翻弄される人間の悲哀(と無力さ)、そして、時には人情味があるが、時にはずる賢く立ち回ろうとしてしまう「人間」という生き物が描き出されている。このあたりにわたしは、ル・カレやフリーマントルに通じるような、イギリス風の醒めたシニカルな視線を感じた。

主役はイ・ヨンエということになっているようだが、彼女の役割は、どちらかというと狂言回し。後半では彼女の存在が強烈なスパイスになるのだが、露出度や重要性という点では、イ・ビョンホンのほうが主役にふさわしいだろう。

だが、その「主役」たちを食ってしまうほど圧倒的な存在感を示すのが、北朝鮮の軍曹役を演じたソン・ガンホ。素朴でユーモラスな性格だが、緊張した状況になると冷静に判断を下し、的確な行動を取れる「大人」の役柄。彼の演技を見たのは「ナンバー スリー」・「シュリ」・「反則王」に続いて4度目だったが、ギャグやシリアスだけではなく、表情ひとつでペーソスを感じさせてくれるのには驚いた。北側兵士役のシン・ハギュンもコメディ担当として好演。イ・ビョンホンは熱演といったところか。

主要登場人物たちがイデオロギーやスローガンを声高に語ることはない。当時の融和ムードを受けてか、映画内に北の指導者たちの肖像画も登場したが、そのシーンも人間の小心で臆病なところをうまく表現していて、それが共感の笑いを誘う。しっかり楽しませてくれながらも、いろいろな事を考えさせてくれる。『月と六ペンス』や『坊っちゃん』を「エンタメ小説」と表現するのと同様の意味で、「エンタメ映画」の名作だと思う。

P.S. 2026年現在の振り返り。
しかしソン・ガンホが、ここまで俳優として成熟するとは…

当時の私は、「アン・ソンギの後継者はソル・ギョングかハン・ソッキュだろう」と思ってました。
何よりも、2人とも痩せ型だったし…(^^;)

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